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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

二度目の南京虫襲来!

             ≪九月二十二日≫      -壱-

  移動の疲れからか、ぐっすりと眠る事ができた。
 今朝の目覚めは、最高。
 こんなに疲れていて、こんなに熟睡していると言うのに、朝はわりと早く目が覚めるのだから不思議なものだ。
 やはり、心の奥で、”早く起きなければ!”と言う気持ちが、知らず知らずのうちに働いているのかも知れない。

 移動移動で、ろくな食事を口にしていないので、早速朝食を取ろうと外に出るが、朝食を取るようなレストランがなかなか見つからない。
 やっと見つかったと、喜んでも午前中はほとんど閉店してしまっている。
 朝食を諦めて、午前8時半三輪タクシーをつかまえて、アフガニスタンの領事館へ向かった。

 さすが国境の街だけあって、アフガニスタンの領事館はすぐ通じたらしい。
 タクシー代は1Rp(34円)。
 目指す領事館は、Cant駅のすぐ近くにあった。
 俺が宿泊しているホテルは、City駅とCant駅のほぼ中央に位置し、すぐ近くには城壁がある。
 アレキサンダー大王もジンギスカンの子供達も使ったと言う、有名な城跡である。

 領事館の前の通りは、枯れ葉舞う、いかにも情緒豊かな哲学の道だ。
 ちょうど、高い木々のトンネルを潜り抜けて歩くような、散歩道なのである。
 それと言うのもこの道、大学へ通じている道でもあるのだ。
 その緑濃い道に接して、アフガニスタンの領事館はあった。

 この領事館は今までの領事館と違って、扉の中に入れてくれず、扉の横に小さな小窓があり、その前でビザを申請する人達が並んでいた。
 毛唐もニ、三人いたが、ほとんどが現地人たちで、同じ目的を持っている人達が十数人並んでいるではないか。
 俺も当然その後ろに並ぶ事になる。

 渡された用紙に、必要な事項を埋めていく。
 なんと手数料が70Rsなのだ。
 70Rs(2380円)?????
 二週間分の宿泊料が消えていく。
 日本での価値で言えば、45000円ぐらいの価値がある。
 ア~~~~ア、なんと言う悲劇か。

       係員「一時間ぐらいして、また来て下さい。それまでに作って置きますから・・。」
       俺 「アッ、はい!」

 係官の言葉に小さくうなずき、今までの元気もどっかへ吹っ飛んで行ってしまい、うつむき加減でその場を離れることになる。
 入り口近くには、長い銃を持った警備兵が、大きな目を見開いて立っている。
 その前を通り過ぎると、広い道に出た。
 大きなため息をついていると、昨日の夜乗った”トンガ”が、なんと俺を待っているではないか。

       お爺さん「乗れ!乗れ!」

 俺の後ろをついてくる。

       俺   「しつこいな!俺は歩いていくんだよ!」
       お爺さん「乗れ!」

 お祖父さんのしつこさに、トンガに乗り込みCant駅に向かった。
 駅の前でトンガを降りて、近くにあるレストランに入るが、お客がまるでいない状態。

       俺 「この店やっているの?」

 店を見回すといた!
 一人、マスターらしき人が、一人いたのだ。

       俺   「やってますか?」
       マスター「やってるよ。」
       俺   「トースト&エッグ&ティ!」
       マスター「OK!」

 これだけの朝食で4.5Rs(150円)。
 ゆっくりと食事をとり、お腹を膨らせた所で再び領事館へ取って返すと、待望のビザが出来上がっていた。
 これで、今日の大きな仕事は終った。
 今度は歩いてホテルに戻る。

 アジア・ハイウエーに出て、踏切を渡ると大きな城跡が見えてきた。
 ヒッチハイクの会長が、前回の旅行の時、友達と二人で冗談にも登って城に入ろうとして、銃剣で押し返されたと言う、あの有名な城跡だ。
 それはかなり高い所にある、大きな城跡だった。
 その城壁から顔を出しているのが、空を向いて伸びている大きな大砲。

 西からはかの有名な、アレキサンダー大王が十字軍を引き連れて東進し、いろんな国を征服していった一つの城である。
 東からは、ジンギスカン率いるモンゴル軍が、西ヨーロッパまで攻め入った時、ついでに蹂躙していった城でもある。
 そんないくつかの大きな歴史の中に、何度も飲み込まれていった城が、今では何事も無かったかのように、威厳を保ちながら、空に届かんばかりにそびえているのである。
 そんな勇姿?いや悲哀に満ちた城を思うと、何か胸に込み上げてくるものがある。
 そんな城後を右手に見て宿に戻った。

                   *

  部屋に戻ると、マスターからルーム・チェンジを告げられた。
 これが災いの元であった。
 二階のかなり広い部屋に通される。
 マスターからしてみれば、広い部屋へと、良かれと思ってしてくれた事かも知れないが、これが大変な事を呼び起こそうとは知る由もなかった。
 衣服を交換した後、洗濯を済ませて、日中の暑い時間昼寝をした。

                   *

  ムムムム・・・・・・。
 何だ、これは。
 痒いぞ!!!!
 ウウウウウウウ・・・痒いなんてもんじゃ・・・無いぞ!!
 飛び起きてみると、赤い斑点が全身150箇所近くやられているではないか。
 南京虫????
 特に両腕と腰の周り、そして足が特に酷いのなんのって。
 ドンドン痒みが広がっていく。

 日本から持ってきた”ウナコーワ”と”ムヒ”を、この時とばかりに塗りたくるが効果がなかなかあらわれない。
 右腕は特に酷く、見るも無残。
 見るに耐えない、ボコボコではないか。
 気が狂いそうだ。
 俺はひょっとして、ここで狂い死にするのではないかと、真剣に思ったほどだ。
 カユイ!カユイ!カユイ!カユイ!カユイ!カユイ!
 助けてくれ!!!!

 身体に薬を塗りたくった後、何か気の紛れるようなことをしなくてはと思い、日本への手紙を書く事にした。
 夜は、隣のベッドへ移って眠る事にした。
 この痒みの中、眠らなくてはならないとは、なんと残酷な話ではないか。
 あ~~~~~あ!飛行機で飛べたらナー!!!
 なんとも情けない話である。
 今晩はどうやら、眠れそうもない!
 眠れない夜を迎えた。

                *

            トイレット・ペーパー4Rs(136円)。



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